立劇場花形歌舞伎3月公演   通し狂言  金門五山の桐きんもんごさんのきり  石川五右衛門  2010/3/12

太閤秀吉の寝首をかこうとして捕えられ、釜煎りの刑になったと伝えられる大泥棒・石川五右衛門。大胆不敵にも天下人・秀吉と渡りあった五右衛門は、庶民の絶大な人気を集め、彼を主人公に多くの浄瑠璃や歌舞伎がつくられました。
今回の五右衛門を扱った作品は最初の歌舞伎芝居で1778年に初演されました。
原作は真柴家の後継者争いに絡めて、五右衛門一族の陰謀と数奇な運命を描く壮大なスケールの物語です。五右衛門に橋之助、久吉に扇雀さんと配役も申し分ない五右衛門狂言の決定版です。

感想・・・中村橋之助さんの2人のお子さん宣生(小学生)、国生(中学生)も春休みなので、運よく親子の共演が見られラッキーでした。子役ながらお二人は既に「成駒屋」の看板をしょって立つに相応しい雰囲気が漂っていました。
橋之助さんは高所恐怖症だそうですが、大きなつづらから抜け空中で宙乗りをしながら歌舞伎のみえを切ったり大きなしかけで見応えがありました。1階花道幕際から3階迄、ロープに乗り宙乗は圧巻でした。
九幕の長帳場を纏めるのは至難の業でした。纏めあげた時は目がしょぼしょぼ、疲れました。

 宙づりのイメージです


本日の主役 中村扇雀・中村橋之助氏

3/12日お昼の部 開演前の風景

1階5列目真ん中の席、幕間に友人と

寛政12年[1800]2月 豊国[初代]画 個人蔵

国立劇場三月歌舞伎公演 (五幕九場)


時の大領、真柴秀吉には久次という嫡男があるが短慮な性格を疎まれ、跡目の相続は弟の久秋にきめられている。その久秋は京・柳町の廓の傾城九重に入れ揚げ放蕩三昧。久秋が兄に家督を譲るためわざと遊蕩に耽っていることを見抜いた母薗生の方は大将の器量を認めた。弟の心も知らず、久秋を亡きものにしようと後を追う。それを制したのはく此村大炊之助、粗暴な久次を善人に更生させるため50日間自分に預けてと頼む。
久次が預けられている大炊之助館、今日が50日目、久次はまだ善人に立ち返れず家督相続を主張するばかり。大炊之助は久次を更生されなかった責任をとり自害し、代わりに久次の命を救おうとしたが、久次は逆に大炊之助を扇で打ち、その妻を殺した。あまりの乱行に大炊之助は久次の腹に刀を突き立てた。が周りを欺くための事と告げられ、家臣の働きに喜び真柴家の瓢の旗を手渡した。大炊之助は実は久吉に成敗された大民国の将軍宋蘇卿であった。領地と国の太子を奪われた積年の恨みを晴らすため、真柴家に入り込んで反撃を狙っていた。久次に留めをさした。
真柴家を転覆させる企てが怪しくなった宋蘇卿。この大望を幼時に生き分かれた息子宋蘇友に託すしかなかった。先祖伝来の掛け軸に向かい名香𨷻奢木を焚き琴を弾くと掛け軸の絵から白斑の鷹が抜け出て、その鷹に密書を認めた香袱紗を託す。蘇卿は駆け付けた家来の順喜観に掛け軸を渡し我子への加勢を懇願する。追い詰められた蘇卿は腹を切って壮絶な最後をとげた。
絢爛豪華な南禅寺の山門。石川五右衛門(橋之助)が高欄にもたれタバコを飲みながら「絶景かな・・・」と桜満開を眺めている。そこへ鷹が飛んできて高欄に留った。鷹が咥えている香袱紗を見た五右衛門は此村大炊之助が父の宋蘇卿であるとを知る。父を追って日本に渡り、幼少から竹地光秀の養育を受け武将になった。養父光秀が久吉に滅ばされ、今は世を忍んで、敵の久吉を狙う盗賊の首領。五右衛門は養父と実父の恨みを晴らす事を堅く心にちかった。
山門の下に巡礼がいた。真柴久吉(扇雀)の忍びの姿。遺恨ある両者の対面であった。
餅屋の惣右衛門は畳をあげた。この家から桃山まで抜け道が掘られていた。実は竹地光秀の残党。真柴久吉を滅ぼす計略を密かに練っていた。その時白鷹がおりてきた。餅屋で仮の名の次朗作と名乗る石川五右衛門と回国の修行者姿の順喜観は主従の仲。五右衛門が父から預かった香を焚くと順喜観が持つ掛け軸に念が通い鷹は元の絵に戻った。
惣右衛門は敵方に切られてしまうが娘や五右衛門たちを抜け道に案内して息たえる。五右衛門は舅の死骸を葛籠に入れると妖術を使って葛籠を背負って虚空へとびさった。
一足先に桃山御殿に到着した順喜観が捕われた明国の順南太子(宣生)を取り戻してきた。太子の世話役王明安(国生)に助けられたおりつは、女ながらも真柴家の侍を払いのけながら、抜け道を急ぐ。
真柴家の桃山御殿は桃の節句になぞらえた久秋の関白昇進祝いで華やいでいる。その時警備していた高景が何者かに撃たれた。御殿に潜入した五右衛門の仕業であった。
久吉が脇息にもたれてまどろんでいる。忍び入った五右衛門は敵にそろそろと近づく。いざ刺し殺そうとした時、五右衛門の懐の香炉から音を発し、近習の伏原伊織らに囲まれてしまった。借って五右衛門が国師に化けて盗んだ千鳥の香炉が
時雨の間に描かれた「風に柳」の筆勢に音色を誘われたのだった。宿敵を目前にして打ち損じ、地団太踏む五右衛門。
余裕の久吉は敢えて縄を掛けずに五右衛門の行状を問い糾す。五右衛門は「謀反ではなく四海のため」と堂々と答え
返って久吉の政道を批判する。自分を盗賊という久吉こそ、主君小田家から政権を奪い、朝廷の官位を得て日本国を乗っ取った大盗賊という。久吉は天下人である自分を批判する度胸を褒め、五右衛門も又久吉の人の大きさを認めざるを得ない。久吉は、五右衛門を奥座敷に招いてもてなすのであった。
時雨の間を抜け出た五右衛門は激しく真柴勢と戦っている。そこに久吉、高景、岩波、久秋、民部、順喜観が現れ、五右衛門を追いつめた。撃たれた高景は替え玉だった。本物の順喜観は既に捕えられ、久吉の忠臣加藤正清が順喜観に成りすまして、五右衛門に従っていた。久吉は盗賊ながら仁心備わった器量と、仇打ちの強い決意を愛で、順南太子の帰国を認めた。五右衛門も千鳥の香炉を返す。器量を認め合う二人は弥生の節句のめでたさにこの場での争いを預け、後日戦場での対決を約束するのであった。

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